Webサービスを開発する際、API(Application Programming Interface)を利用すれば複雑なプログラムを1から組まなくても
さまざまな機能を付与することが可能です。
現在、API公開をしている企業は増えており、APIを活用した新しいビジネスモデルも続々と登場しています。
APIの公開・利用は企業成長に役立つことから、今後は自社でもAPI公開やAPI利用を前向きに検討したいと考えている担当者も多いでしょう。
そこで今回は、API公開が積極的に行われている業界、API公開によって期待されること、API公開時の注意点などについてご紹介します。システムに携わる方は、ぜひご覧ください。
- 目次
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- APIとは
- API公開が積極的に行われる業界
- 金融業界
- SNS業界
- EC業界
- API公開で期待されること
- API公開を通して業界を超えた新市場への参入も可能に
- 既存ビジネスの問題解決やパートナーシップの強化
- APIを公開する際の注意点
- API設計時に注意すること
- API運用時に注意すること
- まとめ
APIとは
APIとは「Application Programming Interface(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)」の略語であり、
OSやソフトウェアの機能を一部共有できる仕組みを指します。
例えば、グルメサイトをはじめとする多くのWebサイトでGoogleの地図機能が利用できるようになっていますが、
あれはGoogleが公開しているAPI(Google Maps API)によるものです。
APIを利用すれば、自社のソフトウェアにAPIを通して別のソフトウェアの機能を埋め込むことができるため、1からプログラムなどを組む必要はありません。手間や時間をかけることなく、望む機能を持ったソフトウェアを開発できるのです。
APIの詳細はこちらの記事で詳しく解説しています。
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【初心者必見】APIって何?概要や必要性について徹底解説
APIとは「Application Programming Interface」の略語で、ソフトウェアの機能を共有する仕組みのことを意味します。本記事ではAPIの概念やメリットについてご紹介します。
APIって何? ≫
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API公開が積極的に行われる業界
APIを公開している企業はさまざまですが、とくに以下の業界ではAPI公開が積極的に行われています。
金融業界
2018年6月に施行された改正銀行法により、「銀行や信用金庫に対してAPI公開の努力義務を課す」ことが決定されました。これにより、金融業界ではAPI公開によって新しいサービスを作り出す概念「オープンAPI」が広がりをみせており、既存の金融企業と新しい金融サービスを提供する企業を結びつける動きが活発化しています。
金融機関のAPIが公開されることで、金融サービスを提供する企業のアプリにさまざまな銀行機能(残高や取引明細の照会、振替、振込など)を組み込むことが可能です。これにより、顧客はアプリなどを介して自身の口座残高を確認したり、振り込みをしたり、口座の出入履歴を呼び出して家計簿をつけたりすることができます。
SNS業界
SNS業界でもAPI公開は活発で、身近なものだと「LINE」「Facebook」「Twitter」「Instagram」「YouTube」などが
APIを公開しています。
とくに多く見られるのは、SNSアカウントを利用したログイン認証でしょう。既存のアカウントを使用することで会員登録が不要になるため、個別にアカウント登録をしなければならなかったり、IDやパスワードを忘れてしまったというよくあるヒューマンエラーを回避できるようになり、ユーザー利用のハードルがグッと下がります。
EC業界
ECシステムのAPIを利用すれば、ECサイト構築にかかる時間やコストを削減できる他、
あらゆるデータ(顧客・商品・在庫・受注・出荷など)の処理が実現できます。
例えば、BASE株式会社(BASE, Inc.)では、無料ECサイトを開設できる「BASE(ベイス)」の
ネットショップ情報を利用できるAPIを公開しました。これにより、EC企業向けのアプリを開発・提供している企業によってAPI活用が進み、EC業界の発展が進む結果となっているのです。
API公開で期待されること
API公開・活用は、政府も推進しています。企業成長につながるとされるAPI公開ですが、主にどのような効果が期待されるのでしょうか。
API公開を通して業界を超えた新市場への参入も可能に
APIを公開することで、新市場への参入および新規顧客へのリーチが可能になります。顧客へのタッチポイントが、自社のWebサイトやリアル店舗などに限定されている企業は少なくありません。
しかし、API公開によって他社サービスに活用してもらえれば、間接的ではありますがこれまでリーチできなかった層にアプローチでき、新規顧客を獲得する機会が得られるでしょう。業界や既存ノウハウに縛られない柔軟な働きができるため、新たな企業価値を見出すことができるはずです。
既存ビジネスの問題解決やパートナーシップの強化
API公開によって自社の抱える課題を解決できる可能性があります。
例えば、新しい商品やサービスのマーケティング活動において、望んだ効果が出ないときもあるでしょう。
しかし、API公開によって自社が公開したAPIを活用したいというビジネスパートナーが現れれば、
新たなチャネル開拓につながります。また、自社サービスを他企業に提供することで、
自社とAPIを利用する企業の相互に利益が生まれるため、パートナーシップ強化の拡大も期待できるのです。
APIを公開する際の注意点
Web APIの場合、RESTというルールに基づき設計することが一般的です。
RESTは「リソース(URIで表されるAPIの操作対象)」「行為(HTTPメソッド)」「表現」の3つで構成されています。
こちらでは、API公開の設計時と運用時におけるいくつかの注意点についてご紹介します。
API設計時に注意すること
APIを設計する際には、様々な定められたルールに基づいて設計を行う必要があります。
設計時には抽象的な名詞は避け、分かりやすい単語を選ぶなどAPI利用者が内容を把握しやすいようにすることも大切です。
APIを利用した際のデータのレスポンスはデータサイズが小さく、JavaScriptと相性が良い「※JSON形式 」が推奨されています。データの種類によっては専用のデータ形式もありますので、必要に応じて使い分けるようにしましょう。
加えて、API利用時に不具合が起きた際、エラー内容を表示するメッセージも設定する必要があります。どこに、どのような問題が発生しているかが分かるように、設計しましょう。
この他、データ取得・更新・削除の処理、不正な値を入力した際の処理、認証アクセスが漏えいした際の処理など、セキュリティ構築にも力を入れることが大切です。
※「JavaScript Object Notation」の略で、「JavaScriptのオブジェクトの書き方を元にしたデータ定義方法」
API運用時に注意すること
API運用時には、利用者に向けて重要情報(APIの仕様変更など)を通知する必要があります。ホームページ上で告知したり、直接メールしたり、説明会を実施したりと、どのような手段で重要情報を通知するかをしっかりと決めておきましょう。
状況によってはAPI利用者側で改修を行うこともあるため、API利用者からエンドユーザーへの通知・対応の時間を考慮し、変更実施までに充分時間を取れるように配慮することも大切です。
まとめ
API公開を目指す際は「なぜAPIを公開するのか」「どのようなビジネスモデルを展開するのか」など、目的を明確化しましょう。
API利用者をある程度想定できるため、「どこまでを公開範囲とするのか」など、自社の成長と利益追求につながる選択ができるようになります。
API公開によって生まれる新しいサービスは、自社内だけでサービスを利用するよりも、多くの方のビジネスや生活を支える力になります。自社の価値を高めることにもつながるため、ぜひAPIの公開や他社のAPI利用を検討してみてはいかがでしょうか。