「共創(きょうそう)」の本質とは? DX時代に欠かせない重要キーワード解説

2022/05/13

「共創(きょうそう)」という言葉をご存じですか?
近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)とともに注目されているワードであり、多くの経営者が意識して共創事業・共創案件などを打ち出しています。
しかし、「共創が何を意味する言葉なのか」「いまの時代になぜ必要なのか」という問いに具体的な答えを返せない方も少なくありません。つかみどころのない方針は現場の混乱を招き、企業の成長を妨げる恐れすらあります。
そこで今回は、共創とは何か、なぜ必要なのか、どのような効果をもたらすのかなどを詳しく解説します。共創の本質を理解し、企業成長の一助としましょう。

「共創(きょうそう)」の本質とは? DX時代に欠かせない重要キーワード解説

目次
    1. 「共創」とは何か
    2. 共創が必要な理由
    3. 共創の目的・効果
    4. 共創の3つのタイプ
      1. 双方向の関係
      2. 共有の関係
      3. 提携の関係
    5. 異業種との共創を実現できる「APIエコノミー」
      1. APIエコノミーの事例
    6. まとめ

「共創」とは何か

共創とは「多様なステークホルダー(※1)と協力しながら新しい価値を創造する」という概念であり
「co-creation(コ・クリエーション)」の日本語訳です。2004年、米国ミシガン大学の教授である
C.K.プラハラード氏とベンカト・ラマスワミ氏の共著『価値共創の未来へー顧客と企業のCo-Creation』で提起された概念といわれており広がったといわれています。
これまで自社だけで完結していた企画・商品開発・改善・認知・事業化活動などをステークホルダーとともに協力しながら進める共創は、マーケティング手法の一つとして捉えられています。
加えて、イノベーション(技術革新)創出の足掛かりとしても重要視されているため、新規事業を立ち上げる際に共創を取り入れようという動きが活発化しているのです。
※1:経営者や従業員、顧客、協力関係にある企業、社外の人材の他、金融機関や行政機関、各種団体などの利害関係者

共創が必要な理由

共創が必要な理由

共創は、日々変化する市場に適応するために欠かせません。
あらゆる市場が成長し、市場によっては飽和状態にまで至る昨今、新しい商品やサービスは生まれにくくなっています。
既存のビジネスの常識や枠組みはもはや意味をなさず、異業種の参入により市場競争はより熾烈に、より過酷になっています。
競争優位性を築き上げてきた企業ですら生き残りは容易ではなく、加速する消費サイクルについていけず
他社との差別化に苦戦する企業も少なくないのです。この瞬間にも消費者の価値観や好み、ライフスタイルは変化を続けているため、自社単独の努力だけでは消費者の心を捉えられなくなっています。
商品やサービスを提供するだけで成立した時代は、もう遠い過去の話です。
企業は常に消費者との関わりを意識し、厳しい市場を生き抜くためにあらゆる戦略を講じなくてはなりません。
将来の先行きが予測しづらいVUCA(ブーカ ※2)の時代だからこそ、他社や社外の人材と協力し合い
新しい価値を創造すること(共創)が求められているのです。
※2:「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字。環境の変化が著しく、将来が不透明で予測が困難な状態を指す。

共創の目的・効果

共創の目的は、「市場の飽和により失われた競争優位性を、対立ではなく協力によって取り戻すこと」です。
もちろん企業によって掲げる目的が異なるケースは往々にしてあり、中には社会的意義という大きな目的を掲げる企業もいるでしょう。
どのような目的を掲げたとしても、共創においては自社だけでなく、他社の課題も自分ごとに捉えることが大切です。
損得でつながる関係ではなく、共創の真ん中に共通目的を据えることで、価値観も業種も立場も異なる人たちがお互いに歩み寄り、プロジェクトに取り組めるのです。
またステークホルダーとの共創により、自社では考えられない新しいアイデアが生まれたり、時代に適したニーズに気付いたり、自社にない技術を用いた商品・サービスを開発できたりと、さまざまな恩恵を得られます。
加えて、スキルや経験を磨くことにもつながるため、人材育成の面からもプラスの効果を得られるでしょう。

共創の3つのタイプ

共創の3つのタイプ

共創は、相手との関係次第で3つのタイプに分けることができます。

双方向の関係

「双方向の関係」は、企業と顧客が対等な関係で議論を行い、新たな価値を生み出す取り組みです。
顧客の抱える事業課題は何か、どうすれば解決できるかをともに考え、新しいビジネスモデルを構築します。
顧客からの意見は、自社商品やサービスの向上につながる貴重な情報です。顧客を単にビジネスの相手と考えるのではなく、ともに悩み、課題を解決し、より良いものを創出する大切な相手と捉えることが重要です。

共有の関係

「共有の関係」は企業や自治体、研究機関などがコミュニティやコンソーシアム(※3)のようにオープンな関係を構築し
一つの課題やテーマについて議論を重ね、アイデアを出し合う取り組みです。
特定の誰かの働きに期待したり、利益を独占したりするのではなく、一人ひとりがリーダーシップを発揮しながら
全員が自分の分野で価値の創造を目指します。
※3:組織や企業、個人などからなる共同事業体を指す。

提携の関係

「提携の関係」は、プロジェクトを実行する上で自社に足りないもの(アイデア・技術・人材など)を他社の協力によって補い、解決する取り組みです。協力を依頼する側・依頼された側の関係ではありますが、会社の規模や業界の違いなどで双方に上下関係が発生することはありません。ともに課題を解決する対等なパートナーであるという意識を持ち、遠慮なく意見を述べ合うことが成果を挙げるために大切なのです。

異業種との共創を実現できる「APIエコノミー」

APIエコノミーとは、「API(Application Programming Interface)の公開により
自社・他社のビジネスが拡大することで生まれる商圏(経済圏)」
です。
APIは自社と他社をつなぐ一つの手段であり、DX実現への取り組みが推奨される現在では多くのAPIが公開されています。
実際に、API(=他社からの技術提供)によってビジネス拡大を成し遂げた企業も多数登場しています。
APIエコノミーは、業界を問わずさまざまな企業をつなぐ出会いの場。
共創のシステムを構築するために欠かせない重要な戦略の一つになり得るでしょう。

APIエコノミーの事例

APIエコノミーで共創に取り組んでいる企業は複数あり、代表的な企業として挙げられるのが「Google」です。
中でもGoogle Maps APIは多くの企業が導入していることで知られており、APIの活用が広がることでGoogleも、導入した企業・店舗も、新しい価値を創造できています。企業を利用する消費者にとっても、APIによって生活が便利になるため、企業の共創がもたらす効果は幅広いものといえるでしょう。
また、廃車アプリサービスを提供しているUberのAPIも、さまざまなホテルのWebページに利用されています。
APIエコノミーによる共創は、企業や金融機関、政府など、さまざまな場所で始まっているのです。

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まとめ

変化の多い市場において、一企業だけでIT市場を席巻するGAFAのような巨大企業に対抗するのは難しいでしょう。
それぞれの企業が価値を示すためには、共創によって自社の強みをより強固にする、弱みを補完する必要があります。自社だけでは優位性を示せなくても、他社と力を合わせることで生き残ることは可能です。
共創の意味を理解した上でビジネスの方向性を整え、現場レベルまで戦略を落とし込みましょう。

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