本来、企業内にあるデータは有効活用されて然るべきですが、部署ごと・業務ごとにさまざまなシステムを使ってデータ管理を行うと、あらゆる重要なデータが企業内に散在してしまいます。
各システムで管理されたデータを活用するにはシステム連携を行う必要がありますが、それを可能にするのが「EAI(イーエーアイ)」です。
今回は、EAIの概要、ETLとの違い、EAIの機能や導入のメリット、EAIツールの選び方などについてご紹介します。
- 目次
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- EAIとは?
- EAIとETLの違い
- EAIの仕組みと機能
- アダプタ機能
- フォーマット変換機能
- ルーティング(フロープロセッサ)機能
- プロセス制御(ワークフロー)機能
- EAIツールを導入することのメリット
- 運用開始までの期間と工数の削減
- システム改修などの仕様変更への迅速な対応
- データの信頼性
- EAIツールの選び方
- SOA構築が可能なJBATの情報連携支援ソリューション
- まとめ
EAIとは?
EAIとは、「Enterprise Application Integration」の略語。直訳すると「企業(業務)内アプリケーション統合」という意味です。企業内・業務内に設置・運用された個々のシステムやデータ、ビジネスプロセスなどを連携する仕組みや技術のことを指します。
企業内・業務内では、さまざまなコンピュータシステムが使用されており、ソフトウェアやデータ形式についても全て統一されているわけではありません。過去に使用していたものと、現在使用するものとでも違いがあるでしょう。
従来であれば、これらの機種やデータを連携するためには個別にインターフェースやプログラムを開発しなくてはならず、仕組みの構築や不具合が起きたときの改修に手間がかかるものとされてきました。
しかし、部門ごとに最適化された業務システムが企業内で乱立した2000年前後、複数のシステム・アプリケーション内に管理されたデータの実態を把握できないことが課題として浮き彫りに。これを受けて生まれたのがEAIでした。
EAIは散り散りになった重要データ同士をつなぐ、いわばHUB的な役割を持ちます。既存システム・アプリケーションから必要なデータのみを連携・活用できるため、効率良く組織改革を進めることが可能です。
EAIとETLの違い
EAIの機能と似ているものに「ETL(Extract、Transform、Load)」があります。
EAIは「企業内・業務内における複数のシステムやデータを連携するための手段」ですが、ETLはデータ統合処理の一連の流れを指す言葉です。データ抽出、データ変換、書き出しを行うことでデータを集約・統合し、データ分析・データマイニングを行うことを目的としています。
なお、ETLは「デジタルデータ抽出(Extract)」「データ変換(Transform)」「DWHへの書き出し(Load)」の各プロセスの頭文字を取り「イーティーエル」と呼ばれています。
EAIは1連携あたりのデータ量は多くありませんが、スピーディーでリアルタイムに連携できるため「企業内のデータ連携に強い」という特徴があります。対して、ETLは1連携あたりのデータ量が多く、バッチ処理(※1)で大量のシステムデータを処理できるため「企業間のデータ連携に強い」という特徴があります。
リアルタイム性を求めるならEAI、処理能力を重視するならETLが推奨されるでしょうが、双方はデータ更新の頻度や得意とする処理範囲が異なるため、一概にどちらが良いとはいえません。状況に応じて使い分けることも視野に入れつつ、自社の課題解決を後押しするツールを導入しましょう。
※1:事前に登録した一連の処理を自動的に行う方法。一定量または一定期間のデータを収集し、大量のデータを一括処理する。
EAIの仕組みと機能
EAIを活用すれば異なるシステム同士を連携できますが、どのような仕組みでそれらを可能にしているのでしょうか。
こちらでは、 EAIの仕組みと機能についてご紹介します。
アダプタ機能
アダプタ機能は、あらかじめ部品化された「システム同士のデータ授受を可能にする機能」です。
アダプタが各システムとの接続を行う窓口になるため、個別にインターフェースやプログラムを開発する必要がありません。
フォーマット変換機能
フォーマット変換機能は、「アダプタから受け取ったデータの形式を変換する機能」です。
システムごとにデータ形式やプロトコルが違ってもフォーマットを変換できるため、スムーズにデータを連携できます。
ルーティング(フロープロセッサ)機能
ルーティング機能は、「フォーマット変換・出力されたデータを自動で振り分ける機能」です。目的に合わせて適切な配信先・配信順序に振り分けます。
プロセス制御(ワークフロー)機能
ルプロセス制御機能は、「適切なデータ処理を行うための制御機能」です。アダプタ、フォーマット変換機能、ルーティング機能を統合し、1つのシステムとして動かします。
「A・Bシステムを連携する」などのシンプルなフローだけでなく、「A・B・CシステムのデータをDシステムに連携し、収集したデータをさらにEシステムに連携する」などの複雑なフローも自動化できます。
EAIツールを導入することのメリット
EAIツールを導入するメリットとして、主に下記の3つが挙げられます。
運用開始までの期間と工数の削減
データ連携のためにインターフェースやプログラムを開発するとなると、運用までに長い期間と開発コストがかかります。
また、開発が完了した後も「開発者または技術者でなければ扱えない」などの属人化を招く危険性もあります。
しかしEAIツールなら、インターフェースやプログラムの開発は必要ありません。直感的に操作できるGUI(Graphical User Interface)が多く、言語知識がなくてもシステム内容を理解できるため、エンジニアでなくても簡単にデータを扱えるのです。人材獲得や育成にかかる時間を短縮できる他、データ連携の作業工数を大幅に削減できます。
システム改修などの仕様変更への迅速な対応
システム改修やバージョンアップなど、EAIと連携するシステムに仕様変更があっても、システム内容がGUIで可視化されているため迅速に対応できます。プログラムを修正する手間がないため、社内エンジニアはコア業務に注力できます。
データの信頼性
EAIツールによってシステム統合の作業を自動化すれば、ヒューマンエラーが発生するリスクを軽減できます。
データの誤変換や多重入力、データ消去・喪失、データ改ざんなどを防止できるため、データの信頼性・正確性を高められるのです。
EAIツールの選び方
EAIツールを選ぶときは、「自社の目的に合った機能を備えているか」「現場で使いこなせるか」の2点を確認することが大切です。
例えば、「システム間の連携のみできれば良い」というA社と、「データ連携の流れをモニタリングしたい」というB社と、「APIの設計や保護、拡張もしたい」というC社では、選ぶべきEAIツールは異なるでしょう。EAIツールを導入して何をしたいのかという目的を明確にし、その上で自社に必要な機能を有したEAIツールを選ぶことが重要です。
EAIツールの多くはノンプログラミングで利用できるため、先でも述べたようにプログラミングの知識がない方でも操作は可能です。しかし、ツールの中にはある程度のITリテラシーが求められるものもあります。便利な機能を有していても、現場で使いこなせなければ意味がありません。無料版やトライアル版を利用して、担当者が問題なく使いこなせるかを確認しましょう。
SOA構築が可能なJBATの情報連携支援ソリューション
JBATでは、自社のシステム環境に合った情報連携支援ソリューションを提供しています。プログラム開発は必要なく、企業内・業務内に蓄積したシステムデータを素早く収集し活用することが可能。専門知識や経験がない方でも、直感的な操作でスムーズにデータ連携が行えます。
EAI(リアルタイムなシステム連携)や、ETL(バッチ処理によるデータ連携)などお客さまの求めるシステム・機能を提供できる他、SOA構築(※2)により、既存システムと新たなシステムをより柔軟に活用できるよう支援します。
※2:Service Oriented Architectureの略語で「サービス指向アーキテクチャ」という意味。
ネットワーク上にて、ソフトウェアの機能とサービスを連携させてシステムを構築する手法のことを指す。
まとめ
EAIツールを導入することで、企業内に散らばる大量の有効データを効率良く活用できます。
社内のデータ連携はEAIツールに、外部とのデータ連携はAPIにというように場面によって適切なツール・機能を使いこなし、データ活用によって業務改革が進めば、政府の推奨するDX(デジタルトランスフォーメーション)の促進にもつながるはずです。
EAIツールやETLツールの導入についてお困りの方は、ぜひJBアドバンスト・テクノロジー株式会社にご相談ください。