DXの取り組みやリモートワークの浸透により、ペーパーレス化が加速してきました。また2022年の電子帳簿保存法の改正により、2024年1月から電子取引のデータ保存が完全義務化されることも、ペーパーレス化の追い風になっています。
しかしデータ保存の要件が厳格でハードルが高い、ペーパーレス化の進め方がわからない、紙の業務に慣れている社員への指導、導入費用の問題などからペーパーレス化がなかなか進まない企業も少なくありません。紙書類に頼る企業にペーパーレスを根付かせるには、どうすれば良いのでしょうか。
JBグループでは、業務センターの紙・FAX業務を自動化し、毎月900件の請求書処理をテレワークで実現しました。このノウハウをもとに、他の企業への業務改善の支援も行っています。今回はJBグループが持つノウハウをもとに、ペーパーレス化の進め方や成功事例、法改正についても解説していきたいと思います。
- 目次
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- ペーパーレスとは
- ペーパーレスが必要とされる理由
- ペーパーレスの対象
- ペーパーレス化を加速する電子帳簿保存法の改正ポイント
- 事前申請が不要に
- スキャナー保存の要件緩和
- 電子取引の電子データ保存の義務化
- ペーパーレスの現状
- 75%の企業がペーパーレスを意識している
- ペーパーレスのメリット
- 業務効率化
- テレワークの導入
- 環境保護・SDGsの取り組み
- コスト削減
- ペーパーレス、セキュリティ強化やシステム障害対応が重要
- ペーパーレス化の進め方とは?
- 業務の見える化
- 業務の整理・見直し
- 必要なツールの検討
- テスト運用と教育を繰り返し実施
- ペーパーレスのシステム構築をするためには?
- 大量の受注処理を効率化!ペーパーレス化の事例
- まとめ
ペーパーレスとは
ペーパーレスとは「ビジネス文書などを紙に印刷するのではなく、電子化すること」です。
これまで紙で使用・管理していたビジネス文書などを電子化することで、業務効率化や生産性向上、コスト削減などを図ります。
ペーパーレスが必要とされる理由
ペーパーレスが必要とされる理由の一つに「働き方の変革」が挙げられます。分かりやすい例がリモートワークです。
withコロナ時代の台頭により、リモートワークが多くの企業に普及しました。自宅にいながら仕事ができるのはリモートワークの大きなメリットですが、
企業の中には業務で使う書類・資料を紙で管理しているためリモートワークに対応できず、出社を余儀なくされたというケースもあります。
また、近年は労働力が減少しているため、限られた労働力を効率的に活用する働き方が求められています。
ペーパーレスによりどこでも情報などが共有できるようになれば、出社の必要がなくなるため、従業員一人ひとりに合った働き方を提案できるでしょう。
優秀な人材の確保・定着率も高まるはずです。
さらに、ペーパーレスは企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の足掛かりにもなります。既存のビジネスモデルを壊し組織そのものを変革するのは、
一朝一夕ではできません。まずはペーパーレスの導入で業務効率化を目指し、DX化の施策を進めていくことが大切です。
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ペーパーレスの対象
e-文書法の施行により、ペーパーレスの対象になっている文書は下記のとおりです。
ただし、場合によっては電子化が認められないものもあるため注意しましょう。
ビジネス文書
ビジネス文書とは、仕事を円滑に行うための情報や業務の進捗状況、現状の課題が記載された文書や、意思確認のために作られる文書のことです。
稟議書や通達書、届出書、報告書などが挙げられます。
広告物
自社のパンフレットやカタログ、書籍、雑誌、チラシ、ポスターなどの広告物・販促物もペーパーレスの対象です。
ペーパーレス化を加速する電子帳簿保存法の改正ポイント
ペーパーレス化が必要な理由として、コロナ禍への対応や働き方改革、DXの取り組みの他にも、電子帳簿保存法の改正があります。 企業においては、決算関係書類や取引書類を7年間保存する必要があります。これらの書類は紙の状態だと膨大な枚数になるため、紙の消費や保管スペースといった大きなコストがかかります。 そのため特例として電子保存をするための要件を定めたのが電子帳簿保存法です。2022年の法改正で電子保存の要件が緩和されたことでハードルが下がり、ペーパーレス化しやすくなりました。 2022年に改正された電子帳簿保存法の主なポイントは次の通りです。
事前申請が不要に
これまで帳簿や請求書、領収書等を電子保存するには、税務署への届け出が必要でしたが、今回の改正で不要になりました。ただし、すでに届け出をしており緩和された要件で運用したい場合は、その旨を届け出る必要があります。
スキャナー保存の要件緩和
紙で提出された請求書や領収書はスキャナーで読み取って画像で保存することが認められています。改正では保存する際の要件が緩和されました。例えば改正前は国税関係書類をスキャナーで読み取った際に帳簿と相互に関連性を確認できるようにしておく必要がありましたが、改正後は契約書、領収書のように資金や物の流れに直結・連動する書類に限定されています。
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電子取引の電子データ保存の義務化
紙で提出された請求書や領収書は紙で保存しても問題ありませんが、PDFで提出された請求書やインターネットで購入した備品は電子データが原本となるため、紙で保存することができなくなりました。2023年までは猶予期間でしたが、2024年1月から完全に義務化されるため、注意が必要です。
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ペーパーレスの現状
DX化の一歩ともいえるペーパーレスですが、下記の課題から施策が進んでいない企業も少なくありません。
・紙書類を好む方が一定数いる
・導入費用がかかり設備が不足している
・デジタル機器の扱いに慣れていない従業員への指導ができていない
・オフィスと自宅で機材格差がある
・ペーパーレスに関する社内ルールが整備されていない
しかし、ペーパーレスへの取り組みを意識または実施している企業は75%以上ともいわれています。
75%の企業がペーパーレスを意識している
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を受け、ペーパーレスを導入した企業は多いです。
ペーパーロジック株式会社が行った「ペーパーレス化に伴う2021年度予算に関する意識調査」によると、
ペーパーレスの推進を「積極的に行った」と答えた方が36.1%、「ある程度行った」と答えた方が39.6%でした。
75%以上の企業がペーパーレスを意識し、実際に取り組みを行ったことになります。
なお、導入したシステムで多かったのが電子ワークフロー、勤怠管理システム、経費精算システムです。
また、同アンケートではペーパーレスに取り組んでいない企業も「今後の導入を検討している」と回答しています。
リモートワークが長期化していることもあり、ペーパーレス化の重要性はますます高まっていくことが予想されます。
ペーパーレスのメリット
ペーパーレスのメリットは、主に下記の4つです。
業務効率化
紙書類や資料を活用すると、どうしても作成する、印刷してとじる、分類して保管するという作業が生まれます。
資料が必要になったときに探す手間も加わるため、コア業務に時間を割けないなどの問題が起こってしまうのです。
しかし、DX化推進の一環としてビジネス文書や書類、資料などを電子化すれば、これらの作業量を減らせるため業務効率がアップします。
また、保存環境を整備すればパソコンやスマートフォン、タブレットなどさまざまなデバイスからアクセスできるため、
「いつでも」「どこにいても」情報へのアクセスと業務に取り組めます。
情報の携帯性・検索性が向上することで社外にいても情報共有が可能になるため、外回り営業の際も大量の紙資料を持たなくてすむでしょう。
テレワークの導入
テレワークを導入すると、自宅でのテレワークで、オフィスと同じ量の紙書類が必要となれば業務は成り立ちません。 ペーパーレス化することで書類管理がクラウドやサーバーで行え、オフィスと自宅の環境変化が少なくなりテレワークが導入しやすくなるのです。 自宅とオフィスの往復に紙書類を頻繁に持ち出して移動することはセキュリティ上避けたほうがよく、 テレワークなどの新しい働き方に対応する上でも、ペーパーレス化の推進は非常に重要な役割を果たします。
環境保護・SDGsの取り組み
環境保護・SDGsに取り組むことで企業イメージが向上します。 ペーパーレス化の推進は、環境問題やサステナビリティへの取り組みの一環と捉えることもできます。 オフィスでの紙を削減すれば、森林資源保護やゴミを減らすことによる循環型社会の構築に寄与することができるからです。 ペーパーレス化のメリットは企業のイメージアップにもつながる場合があります。 紙の廃棄を抑え、環境や資源に配慮している企業・SDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)に積極的に取り組む企業として認識され、企業イメージの向上にもつながるでしょう。
コスト削減
ペーパーレスの導入には初期費用がかかりますが、一度環境が整ってしまえば下記にかかるコストを大幅に削減できます。
・印刷時やコピー時に使用する消耗品の費用(用紙代・インク代など)
・オフィス用品の費用(紙資料を保管するファイルなど)
・印紙代、紙資料の郵送代
・印刷機器のメンテナンスにかかる費用
・紙資料の廃棄にかかる費用
・書類保管スペース確保にかかる費用
・人件費(資料の印刷・配布業務にかかる人件費など)
ペーパーレスを導入すると印刷周辺にかかる費用だけでなく、紙資料の保管費用や廃棄費用、人件費に至るまでさまざまな面でコスト削減が叶います。
また、書類などを保管する棚などがなくなれば、オフィスを広く使用できる他、家賃を抑えた小さなオフィスに移転する選択肢も生まれるでしょう。
ペーパーレス、セキュリティ強化やシステム障害対応が重要
ペーパーレスを導入する場合、セキュリティ強化やシステム障害対応に力を入れましょう。
例えば、ウイルスの侵入やハッキングなど外部から攻撃を受けると、大切なデータが盗まれたり、破壊されたりする恐れがあります。顧客情報の流出などのリスクもゼロではないでしょう。
また、災害などによってシステム障害が起きると、データの閲覧すらできなくなります。業務が停滞し、取引先からの信頼も低下してしまうため、あらかじめセキュリティやシステム障害については対策を講じることが大切です。
ペーパーレス化の進め方とは?
様々なメリットがあるペーパーレス化ですが、実現するのは簡単なことではありません。例として手書きの申込書を処理する場合を考えてみましょう。
申込書をスキャナーで読み込み画像を保存すればペーパーレス化したと言えますが、業務効率は変わりません。紙で業務を回しているからこそ生まれる煩雑な作業を効率化しなければ、真のペーパーレス化とは言えません。
JBグループには、グループのバックエンド業務を担当する業務センターがあります。業務センターでは取引先と紙でやり取りする業務があり、ペーパーレス化の大きな課題となっていました。 そこで取引先からの紙の請求書やFAXでやり取りしている納期回答書をデジタル化しました。デジタル化とともに毎月900件の請求書処理を自動化したことで、テレワークで業務ができています。 JBグループではこの時に得た経験を活かし、他の企業のペーパーレス化を支援しています。この経験からペーパーレス化の進め方には、次のポイントがあると考えています。
業務の見える化
ペーパーレス化を進めるには、どのような作業を行っているのかを棚卸し、リストやフローにして可視化するところから始めることが大切です。紙を扱う業務がどれだけあって、どれくらいの時間をかけているかという量的な部分を可視化することが、業務改善の第一歩となります。
業務の整理・見直し
業務を可視化すると、改善するべきことが見えてきます。業務の中で非効率な作業、ムダな作業について改善をしてから、ペーパーレス化をするという順序を守ることがポイントです。
必要なツールの検討
ビジネスに関するシステムにはさまざまなものがあり、クラウドだけでなく、オンプレミスのレガシーシステム(負の遺産)を抱えた企業も少なくありません。それらのデータを有意義に活用するためには、自社のシステムに適したツールを選ぶ必要があります。
テスト運用と教育を繰り返し実施
新たな仕組みを浸透させるのは簡単ではありません。導入では様々な課題が出てくることを想定してテスト運用を繰り返し、出てきた問題を一つひとつ解決していく必要があります。 テスト運用と並行して、教育を実施するのも重要なポイントです。ペーパーレス化の重要性を啓蒙したり、操作方法のサポートを行ったり、といった取り組みで利用者が積極的に活用する土壌を作っていきましょう。
ペーパーレスのシステム構築をするためには?
ペーパーレスやDX化を推進するためには、デジタルツールの導入が必要不可欠です。
しかし、ビジネスに関わる膨大なデータをデジタル化し、システム連携・強化を行うのは簡単なことではありません。
そもそも、ビジネスに関するシステムにはさまざまなものがあり、クラウドだけでなく、オンプレミスのレガシーシステム(負の遺産)を抱えた企業も少なくありません。それらのデータを有意義に活用するためには、自社のシステムに適したツールを選ぶ必要があります。
ただし、ペーパーレスを実現するためには、ただツールを使って電子化するという考え方だとうまくいきません。
現状の紙を使った業務を把握し、業務の見直しを行った上で、業務改革を行った上でデジタル化をするという意識が必要です。
大量の受注処理を効率化!ペーパーレス化の事例
JBアドバンスト・テクノロジーはペーパーレスに特化したサービスを提供しています。
アンケートの電子データ化はもちろん、請求書の振り分けや転記業務など、あらゆる紙業務に対応できる他、最先端のAI技術を搭載したAI OCR技術によっては、手書き文字でも99.2%という高い読み取り精度でデジタル化をすることが可能です。
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JBCCグループ業務センターの毎月900件の請求書処理をテレワークで実現
JBCCグループ業務センターでは、取引先からの紙の請求書や、FAXでやりとりしていた納期回答書をPDF化し、様々な製品やサービスをつなぐクラウドプラットフォーム「Qanat Universe」に取り込みます。毎月900件の請求書の処理を自動化する他、手書きの納期回答書への対応も可能にしています。
事例詳細 ≫
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株式会社文理様は、取引先からFAX で送られてくる注文書をOCRで読み込みデジタル化することに成功。取引先の業務を変えずにどのように受注処理を改善したのか。バックオフィス業務を取りまとめる担当者の方と情報システム課としてシステム構築に携わった担当者の方にお話を伺いました。
事例詳細 ≫
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まとめ
DX化の一歩としてペーパーレスの導入を進めるなら、デジタル機器などに慣れていない方でも利用できるよう工夫することが大切です。
紙書類・資料と同じように使いやすいと感じられるツールを探したり、APIなどを活用して自社に合うシステムを開発したりと、自社でできることを考えてみましょう。
またDX化を進める中で、ペーパーレス以外にもあらゆる施策を行う必要が出てきます。
そのときにも、デジタル機器に不慣れな従業員の方へ配慮しながらツールなどを選びましょう。心を配ることで、ペーパーレス化などに前向きに取り組んでもらえるはずです。