近年、働き方の多様化やITシステム・ツールの充実化などが追い風となり、DX化やペーパーレス化への取り組みも盛んになっています。そんな中、日本の慣習ともいえるハンコ文化が見直され、実際にいくつもの行政手続きにおいて押印廃止が行われています。こうした脱ハンコは、企業にどのような影響をもたらすのでしょうか。そこで今回は、脱ハンコとは何か、メリット・デメリット、脱ハンコを推進する4つのステップなどについて解説します。
- 目次
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- 脱ハンコとは
- 脱ハンコが推進された背景
- 地方自治体の脱ハンコの取り組み例
- 押印しないことで法律違反にはならない?
- 脱ハンコのメリット
- 押印業務が減り生産性が向上する
- 押印書類が減ることでコスト削減につながる
- コンプライアンス強化
- 脱ハンコのデメリット
- デジタル化が認められない書類がある
- 業務フローの改善が必要になる
- 脱ハンコに必要なシステム導入に費用がかかる
- 脱ハンコを推進するステップ
- 脱ハンコを導入する目的を明確にする
- 電子化する範囲を決める
- 運用体制やシステム導入などの環境を整える
- 社内と顧客に周知する
- まとめ
脱ハンコとは
脱ハンコとは、行政や民間の手続き時における押印を廃止するための取り組みのことで、契約書、請求書、稟議書、その他行政サービスを受けるための必要書類など、あらゆる書類が対象となります。
2020年9月、政府によって発表された「行政手続きにおける押印の99%以上の廃止」は企業の脱ハンコに大きく影響を及ぼしました。
また、業務効率の向上や海外企業との競争、環境保全などの理由からDX化・ペーパーレス化に注目が集まっていることで、脱ハンコへ向けた歩みが加速していると考えられます。
脱ハンコが推進された背景
政府が掲げる政策の一つに「行政のデジタル化」があります。
しかし、行政手続きには押印が必要なものが多く、押印そのものがデジタル化を阻む障壁となっていたのです。
これにメスを入れたのが現デジタル大臣・内閣府特命担当大臣を務める河野太郎氏です。2020年9月、河野氏は原則としてハンコを使用しない「脱ハンコ」を要請。同年11月13日には「行政手続きにおける押印(認印)の全廃」を発表しました。
これにより現在では、約1万5,000件の行政手続きのほぼ全てで押印(認印)が不要となります
(不動産登記や法人登記などの実印が必要な83件はのぞく)。
地方自治体の脱ハンコの取り組み例
脱ハンコの取り組みは、自治体によってスピード感に差があります。
例えば、神奈川県相模原市では2,413件の手続きにて押印が廃止(2022年4月27日時点)、千葉県成田市では押印を必要とする行政・内部における約1,200件の手続きのうち80%以上を見直し、現在は625件の押印廃止を実施しています(※手続きによっては本人確認書類の提示が必要)
押印廃止の一例
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相模原市
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指定管理者指定申請書、基幹システムにおけるリリース承認、HDD媒体管理、相模原市観光事業等補助金に関する申請書、建設事業委託に関する各種様式、事業協同組合に関する申請・届出書類 など
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成田市
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委任状、法人設立等申告書、特定施設設置(使用)届出書、小規模専用水道新設・増設(改造)工事確認申請書、臨時営業・休業承認申請書、卸売業務許可申請書、一般廃棄物収集運搬業・一般廃棄物処分業許可(許 可更新)申請書 など
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押印しないことで法律違反にはならない?
結論からいうと、押印なしは法律違反にはなりません。
特定の定めがある場合をのぞき、押印そのものが契約の効力には大きく影響しないため、書面への押印は絶対に必要というわけではないのです。
脱ハンコのメリット
脱ハンコには、以下のようなメリットがあります。
押印業務が減り生産性が向上する
まずは、押印業務が減ることで生産性が向上します。そもそも、「ハンコ文化は生産性の低下を招く」といわれています。
押印作業はあくまでも承認の意思を示すもの。押印ありきの業務が多いと承認に時間がかかる他、書類の保管・管理業務も発生するため、結果としてコア業務に割くべき時間が奪われてしまうでしょう。
脱ハンコにより押印作業を最小限にすれば、業務に注力できるため生産性は高まります。
押印書類が減ることでコスト削減につながる
次に、押印書類が減るためコスト削減につながります。
例えば、印刷にかかる紙代やインク代、OA機器の維持費、書類を保管するためのファイルやスペース確保にかかる費用、書類管理にあてる人件費など、あらゆるコストを削減できます。
コンプライアンス強化
脱ハンコは、コンプライアンス強化にも役立ちます。紙書類は紛失や破損、文書改ざんなどのリスクがありますが、脱ハンコとともにペーパーレス化(電子化)に対応すれば、セキュリティの向上によりコンプライアンスを強化できます。
脱ハンコのデメリット
脱ハンコにおけるデメリットは、以下のとおりです。
デジタル化が認められない書類がある
会社で扱う書類の中には、デジタル化(電子化)できない書類も含まれています。
例えば、訪問販売契約書などの一部においては、紙の書面で残すよう定められているものもあります。
脱ハンコによりDX化・ペーパーレス化を推進しようと考える企業にとっては、足並みを乱す原因になるかもしれません。
業務フローの改善が必要になる
脱ハンコに取り組むなら、押印廃止書類の選定やデジタル化する書類の選定の他、業務フローの改善も必要不可欠。
申請書の項目見直し、申請・承認に関係する社内ルールを設け、マニュアルまで作ることが大切です。
何も決めずに施策を開始してしまうと、「誰が承認・決済をしたの?」「責任の所在が分からない」などの問題が発生してしまう可能性があるため注意しましょう。
脱ハンコに必要なシステム導入に費用がかかる
脱ハンコの実現には、電子契約サービスなどのシステムやツールの導入が必要です。
コストだけが多大にかかって結果はいまいちだったな、とならないように、脱ハンコに必要なシステムの選定と電子化する書類の選定をきちんと行いましょう。
脱ハンコを推進するステップ
こちらでは、脱ハンコの実現に欠かせない4つのステップをご紹介します。
脱ハンコを導入する目的を明確にする
まずは、脱ハンコの目的を明確にしましょう。目的が曖昧なままシステムなどの導入を進めても、効果があったのか分かりづらく、従業員のモチベーション低下にもつながりかねません。
現状の課題は何か、どの程度の業務効率化が見込めるのか、コストは削減できるのかなど、できる限りの情報を集めることが大切です。
電子化する範囲を決める
次に、電子化する範囲を決めます。いきなり全ての書類を電子化するのは現実的ではありません。
社内の労使間だけではじめて徐々に広げるというように段階を踏んで範囲を広げましょう。
運用体制やシステム導入などの環境を整える
さらに、運用体制やシステム導入の環境整備に取り組みます。紙の契約書類と電子契約では、業務フローは変わります。
押印のいらない電子契約だからといって担当者が独断専行してしまう可能性もゼロではないため、運用体制や社内ルールの策定を行いながら電子化に対応できる環境を整えてみてください。
社内と顧客に周知する
DX化やペーパーレス化、電子ハンコの導入などを行う際は、社内はもちろん顧客などの社外の方々にも周知しましょう。
紙から電子に移行することに対して、不安を抱く方も少なくありません。中には従来の方法が良かったという方もいるかもしれません。
安心して仕事を続けてもらうために、また取引に対する不安を払拭するために、事前に周知をしていつでも情報を補足して説明できるよう準備しておくと安心です。
まとめ
押印作業は思った以上に業務の時間を取りますし、テレワークなどの導入が進まない原因となります。
「ハンコを押す分、業務に時間を取りたい」「電子契約の提案が増えてきた」「ペーパーレス化を進めたい」などという方は、ぜひ脱ハンコを検討してみてはいかがでしょうか。
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