FAX受注業務をkintone とQanat Universeペーパーレスソリューションで自動化、作業時間4割削減
営業促進部 営業促進課 課長 清宮 壮人 氏(右から3番目)
経営管理部 情報システム課 課長 上村 真 氏(右から2番目)
経営管理部 情報システム課 中村 遼大 氏(右から1番目)
営業促進部 営業促進課 田代 大知 氏(左から1番目)
営業促進部 営業促進課 角田 時子 氏(左から2番目)
営業促進部 営業促進課 香取 知江美 氏(左から3番目)
会社名
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株式会社文理 |
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所在地 | 東京都品川区 |
設立 | 1950 年6 月 |
事業内容 | 小学生・中学生・高校生用の学習参考書・問題集、 塾専用教材、学校採用図書教材、 各種アセスメントの出版・販売 |
URL | https://www.bunri.co.jp/index.html |
株式会社文理様は、取引先からFAX で送られてくる注文書をOCRで読み込みデジタル化することに成功しました。システム化にあたり、kintone のアプリ開発を担当したJBCC株式会社(以下JBCC)、データ連携プラットフォームであるQanat Universe(カナートユニバース)の開発元であり、FAX データをkintone に連携する開発を担当したJBアドバンスト・テクノロジー株式会社(以下JBAT)、JBグループのバックオフィス業務を担い、自社の受注処理を抜本的に改革したC&Cビジネスサービス株式会社(以下C&CBS)、このJBグループ会社3 社のノウハウを結集しました。
取引先の業務を変えずにどのように受注処理を改善したのでしょうか。バックオフィス業務を取りまとめる清宮氏と情報システム課としてシステム構築に携わった上村氏、中村氏にお話を伺いました。
導入前の課題
導入後の効果
kintone、AI-OCRをQanat Universeで連携しFAX 注文書を自動取り込みー文理様の事業内容についてお聞かせください。
上村: 当社は小・中・高の児童・生徒のための学習参考書や問題集を発行している教材出版社です。教科書準拠に強みを持っており、「小学教科書ワーク」「中学教科書ワーク」はベストセラーになりました。2015年に学研グループの一員となってからも増収増益を続けており、文理ブランドでグループに貢献しています。
書店やEC で販売する一般消費者向けの教材と塾や学校向けの教材、最近はアセスメント事業にも注力し3分野で事業展開しています。一般消費者向けは、日本の商習慣として取次と呼ばれる販売会社を通して書店販売していますが、EC での販売量が増えてきているため、EC 企業と取次経由で取引をすることも増えている状況です。塾や学校向けについては、主に学校営業の販売店や塾専用の代理店を通して販売しています。
ー今回のシステムを導入する上では、どのような課題があったのでしょうか。
中村: 関連部署にヒアリングを行って洗い出した課題として、出版業界は紙の文化が根強く残っており、取引先の販売店・代理店は約400 社ありますが、そのうち8 割の注文書がFAXです。しかしコロナ禍をきっかけにデータでやり取りをしたいという企業も少しずつ増えてきました。
そこで中長期的にデータ受注への完全移行を見据えつつ、現状の手書きの注文書についても取引先の業務を変えずにデジタル化できないかと考えていました。
清宮: FAX で送られてくる注文書は弊社のひな型だけでも8種類以上あります。取引先のひな型で発注が来た場合は、社内の受注システムに入力するために注文書の情報から自社コードを調べて自社のひな型に転記する作業が必要です。
転記する作業は非常に非効率で、手間もかかりミスも増えます。繁忙期には1 日に2000 件ほど受注があり、情報システム課や営業担当者など他の課に協力を要請して人海戦術で作業していました。
ー受注業務の改善に取り組むきっかけはどんなことだったのでしょうか。
清宮: 以前から受注業務の課題は認識していましたが、取引先の事情や予算の問題もあって実現できずにいました。きっかけとなったのは社内の企画コンテストです。応募の中に受注業務をOCRで改善する提案があったことで課題としての認識が社内で高まり、業務改善プロジェクトを立ち上げる後押しになりました。 活動の中でOCRを活用したシステムを検討するにあたり、いくつかのベンダーに声をかけました。
ーその中でJBCCのどんな点を評価されましたか。
清宮:他社の提案も素晴らしいものばかりでしたが、中でもJBCCの提案は当社の業務に寄り添った内容でした。当社と同じような業務改善に成功したC&CBSが当社に来て、複合機や業務の流れを確認した上で的確な提案をしてくれたことが決め手になったと思います。kintoneとQanat Universeでシステムを実現するために、営業の中野さんをはじめJBCC、JBAT、C&CBSのJBグループ各社が一体となって提案してくれたことが信頼感につながり、良いものが作れると確信しました。
中村:システム化する前段階として、業務の棚卸をして課題を抽出するC&CBSの業務改善の進め方は非常にわかりやすく、今後の業務改善の参考になりました。
また自社の経験をもとにした効率化の提案が優れていたと思います。当初はQanat UniverseでFAX受信した注文書を取り込み、kintoneで読み込み結果をチェックして受注システムに連携すればよいと考えていました。 それに対してC&CBSからは注文書を処理する担当地域・担当者の割り振りなど、始点となる「複合機にFAX用紙を取りに行ってFAX仕分けを行う」という細かい現場の動きまで再現した業務フローをkintoneアプリでシステム化する提案があり、私たちの検討が不足していた部分もカバーしてもらえたと思います。
ー導入にあたって苦労したことはありますか。
清宮: 弊社のひな型は8種類以上あるのですが、ひな型が異なる発注書をひとつの受注としてまとめなければならないケースがあります。反対に1枚の発注書でも、出荷元が異なる場合や新版と旧版が混在している場合は受注を分けなければなりません。これを今までは人が判断していましたが、新システムではkintone のアプリから受注システムへ自動で連携するため、複雑な分岐をもれなくカバーできているかの検証には非常に苦労しました。要件定義も大変でしたし、本稼働前のテストでは修正の連続で、一時はどうなることかと思いましたね。
しかしkintone アプリの開発を担当したJBCCとQanat Universe の注文書データ連携を担当したJBATの担当者が、最善の方法を一緒に考え尽力してくれました。問題が発生した際に「できない」というのではなく、「こういう対応であればできます」という前向きな提案をしてくれたので、最終的には課題を全て解決することができました。
上村: 以前、数字をOCRで読み込むシステムを構築した際も誤認識が発生していたので、手書きの注文書を効率化できるのか疑問に感じていました。しかし今回は、AI-OCRの活用により精度が向上しています。
ー業務担当者の方は新システムへの抵抗はありませんでしたか。
清宮: 受注処理の課題は元々社内の共通認識としてあったので、大きな抵抗はなかったと思います。ただ一方で、新システムの導入は未知で未経験であるがゆえ、不安は大きかったと思います。その為、プロジェクト発足段階から情報共有は定期的に行っておりました。また早い段階で受注担当者も参加してもらい、意見を吸い上げてシステムに反映するのを繰り返した結果、知識と経験が事前に蓄積され、意識も前向きなものに変わっていったと思います。
ー 導入してどのような効果がありましたか。
清宮: 10 月に運用を開始して2 か月経過しましたが、1件あたり1~2分ほど処理時間が短縮できるようになり、現在は営業担当者や他の課に協力をお願いする事も少なくなりました。
また今まではFAX で送られてくる発注書の処理をするために出社が必要でしたが、現在は在宅でも仕事ができるようになっています。
ー その他に予想外の効果はありましたか。
清宮: 業務担当者がシステムに興味を持ち、自発的に業務を改善しようという雰囲気が生まれたことですね。当初AI-OCRの読み込み対象外だった発注書についても、担当者が運用を工夫したことで読み込み対象に含め、業務を効率化できました。
ー 今後取り組んでいきたいことはありますか。
中村: 中長期的にはデータ受注を拡大していくことを目指しています。
今回のシステムで業務を効率化できたことで、完全なデジタル化への足掛かりになりました。足元の課題としては、FAX 受信した発注書をオンプレミスのファイルサーバーに格納していますが、これを当社で使用しているクラウドストレージに移行してQanat Universe で転送できないかと考えています。
清宮: 今後は定期的に担当者から改善点をヒアリングしていく予定です。
JBCCには新たな課題が出てきた際に相談に乗っていただければと考えています。継続してシステムをブラッシュアップし、さらなる効率化につなげていきたいですね。
本日は貴重なお話しをありがとうございました。