ヤマト インターナショナルは、カジュアルウェアの企画から販売までを一貫して手がける東証一部上場の大手アパレルメー カー。ワニのマークで広く知られる基幹ブランド「クロコダイル」をはじめ合計8ブランドを取り扱い、GMS(general merchandise store:総合スーパー) やショッピングモールの直営店、自社運営のEC サイトなどを通じてビジネスを展開している。
ヤマト インターナショナルは2013年9月、事業戦略・事業推 進・業務検証の強化を目的に「事業支援プロジェクト」を立ち上げた。社内の「運営」「仕組み」「システム」の改善・改革を推進し、 持続的な成長を支える基盤の整備を行う同プロジェクトでは、多岐にわたる内容が議論されたが、テーマの一つに「BIツールの導入」があった。 その経緯について、同社執行役員 事業戦略室長の辻 紀明氏は 次のように振り返る。 「当時、営業実績を確認するにはIBM ホストのエミュレータ画面あるいは帳票を見ていました。しかしエミュレータ画面や帳票は表示できる項目に限界があり、目的の結果を得るまでにいくつもの画面遷移や帳票印刷が必要でした。検証までの工数が多く、分析よりも作業に時間を費やしていました」一方、同時期に社内環境の改善を推進する「若手チェンジプロ ジェクト」も立ち上がり、活動を行っていた。ここでは非効率なシステムの使い方や無駄なプリントなどが問題視され、ペーパーレス化/ペーパーストックレス化による「紙からデータへ」という機運が高まっていた。「営業の現場からはその場で必要に応じたデータを取り出して閲覧したいという要望が寄せられていました。外出先からデータを確認するには本社へ電話するという手段しかなく、簡単な入力や承認作業も社内でしかできないという非効率さも課題でした」
これらの課題を解決するために、事業支援プロジェクトではい つでもどこでもデータを閲覧できる BI ツールの導入を決めた。 そのシステム選定に取り組むことになったのが、同社事業戦略室 事業戦略課の島田 貴志氏。もともとシステム部の出身であり、業務とITの両方を熟知する人物だ。 島田氏は「必要な情報を一画面で網羅し、専用クライアントアプ リを使わずに分析結果を容易にオフィスアプリと連携できるBI ツー ル」を探したという。複数の製品を比較検討した結果、同社の業務を担うに十分な機能を備え、課題解決に最適な製品として選定した のが、JB アドバンスト・テクノロジーの「WebReport 2 .0 Smart」 (以下、WebReport)だった。 「WebReport はIBM ホストで長年の取引関係がある JBCCから紹介してもらいました。この製品はホストに直接接続できるため、中間サーバーを立てる必要がありません。また既存データベー スがそのまま使えるので、新規作成するデータベースが少数で済 み、メンテナンス性にも優位性があります。SQLの知識がなくて も定義を作成できるといった使い勝手の良さも評価しました」 さらに導入コストやランニングコストが合理的であり、ワーク スタイル変革につながることが見込めた点も、WebReportを導入した理由だという。 こうしてヤマトインターナショナルでは2014年4月にWebReportの導入を決定、約半年の設定・構築期間を経て、2014年10月に本番稼働を開始した。
<ヤマトインターナショナルのシステム概要図>
WebReportの導入により「BI ツールの導入」という目標を果た したヤマトインターナショナルだったが、島田氏によれば「当初 は認知度が低く、なかなか活用してもらえなかった」という。そ こで島田氏は営業部門を訪れ、若手やITリテラシーの高い店舗担 当社員に使い方のアドバイスをして回った。また営業部門からの依頼を待つのではなく、島田氏も営業会議に参加して現場のニー ズを調査し、使い方の提案をしながら業務効率化を進めたという。「その結果、現在は毎週月曜日の午前中に前週分の営業実績を確認して午後の会議に臨むといった業務フローが生まれ、スピー ディな現状認識と意思決定に役立っています」(島田氏) このような島田氏の努力もあって、WebReportは同社にさまざまな導入効果をもたらし始めた。なかでも「資産と経験を活用 できるようになったこと」「ワークスタイル変革の実現につながっ たこと」は、特に大きな効果だと辻氏は話す。 「当社にとって商品企画の精度アップは永遠の課題です。 WebReportの導入により、これまで培ってきた経験の数値化・文字化が可能となり、データに基づいた詳細な商品企画ができる環境になりました。例えば定番商品の店頭在庫充足率を定点観測することで、需要予測の精度が上がり、より的確な発注・在庫コントロールが可能になりました。それにより販売機会ロスが減って売上アップに貢献しています」(辻氏) 「WebReport の稼働後、全国約 900 店舗にタブレットデバイスを導入した結果、印刷コストは従来と比べ大幅削減されました。また本社のオフィスレイアウトをフリーアドレスに変更でき、紙の帳票管理からデータ管理へと社員の意識が変わったのも、 WebReportを導入したおかげだと思っています」(島田氏) もちろん事業戦略室やシステム部の業務効率化にも寄与している。 「WebReport はExcel やCSVへの出力が容易なため、システム部への帳票依頼件数も以前から大幅削減されました。システム部は作業負担軽減、営業部門は検証のスピードアップが実現できたわけです」(辻氏)
こうして店舗担当を中心とする営業部門に広がったWebReport だが、一方で課題もあると島田氏はいう。 「WebReport により詳細な分析が可能になりました。しかしベテラン社員は長年の経験から課題への対応はできるものの、データを抽出し加工するPC操作が苦手。一方、若手社員はデータから資料作成や加工は難なくこなすものの、課題を解決する経験値が不足。 このような世代間ギャップを埋めていくのがいまの課題です」この世代間ギャップを埋めるために、今後はWebReportをはじめとするさまざまなツールを活用して課題解決を探る方針だ。 さらに店頭と本社の目線が常に同じになるような仕組みを整え、「コミュニケーション」「スピード」「効率化」を一層進めるという目標も掲げている。 さらに、ワークスタイル変革の一環としてWebReportやワー クフローシステムを整備し、外出先でも業務が行える環境づくりも推進していくという。「これはコストメリットだけでなく、労働時間削減につながるなどワークライフバランスの面からも非常に重要です。当社はいま、優位性を生むための投資軸をハードからソフトへと大きく転換しつつあり、この取り組みはさらなる効率化を図るためにも重要だと考えています」(辻氏)