ジェイエーアメニティーハウスは、業務改善プ ロジェクトを立ち上げ、業務の効率化に乗り出した。同社賃貸管理部次長の古谷亨氏はプロジェクトを立ち上げた背景をこう語る。「社員が付加価値の低い作業に拘束され、夜遅くまで残業していることに常々問題を感じていました。単純作業を効率化して、新サ ービス創出にどんどんチャレンジしていく時間を確保しつつ、早く帰れるような仕事環境にしたいと考えていました」 導入検討の一環として、日々行う業務を可視化して工程単位に分解したところ、いくつかの業務で、改善の必要性が明らかになっ た。そのひとつがデータ加工作業だ。同社はクラウドサ ービスを通じて物件検索サイト「J A ホームネット」やポータルサイトと空室データ連携をしている。この連携をする際に、データ加工が必要だった。 「 データ加工作業がこんなに大変だとは 、可視化するまでわかリませんでした」と古谷氏は語る。作業においては、基幹システムから空室データを csv で抽出、エクセル変換し、様々なフラグを手作業で追加する。さらに特集に該当する物件リストと元データを照合し、該当物件行に「タグ」を追加しなければならな い。この一連の作業にかかる時間は約 1 時間半、慣れていない人にはそれ以上の時間がかかり、工程は 3 0 にものぼった。同社賃貸管理部賃貸企画課の吉武沙織氏は 「手間がかかったことももちろんですが 、朝の 1 0 時までに配信しなければならないという時間の制約があるのが大変でした。単にデ ータ加工作業するだけでなく、基幹システムのデータに不備があった場合は 、最初からやり直さ なければなりません。時間に追われ、精神的なプレッシャーが大きかったですね 」と語る。 さらに、データ更新頻度にも課題を抱えていた。空室データは刻 一刻と変動する。本来の業務の傍らでデータ加工作業をするには1 日 に 1 回が限界だったが、「空室だと思っていたので問い合わせたらすでに満室だった 」というユーザーの声も多かった。
そこで当初は、 E xce l によるデータ加工を RPA で効率化することを検討した。しかし、一 般的な RPA は同社がデ ータ加工で頻繁に行う列一括変換のような編集作業が得意ではない。そこでベンダーから紹介されたのが「デジピタ!」だ。「デジピタ!」はデー夕加工に特化したツールで、名寄せ、空白値の処理、住所の分割など 、事務作業でよく使う操作を自動化できる。「Exc el の編集作業は、 Web サイト配信用の データ加工の他にも、全社的に改善が求められるものだと感じていましたので、デジピタ!を検討 するのにためらいはありませんでした。以前に基幹システムを修 正することも検討しましたが、コストの面から断念したという経緯 もあります。その点 デジヒ゜!夕はコストが抑えられるのも魅力でした」と古谷氏は語る。 技術検証は、プ ログラミング経験を持つ吉武氏が担当した。吉武 氏はトライアル期間の1 か月のうち、最初の 3 日間でシナリオ作成をマスターした。「デジピタ!を使って自動化すると、 Ex ce l のやり方で処理できていたものが、アプローチの違いもあり、考え 方から学ぶ必要があります。とはいえ 、デジピタはマ ニュアルもわかりやすく、思いのほか簡単に習得できました」と吉武氏は振 り返る。「デジヒ°夕!のできる範囲はExc el のマクロでカバーでき ることもあります。ただ、マクロを使うとどのような設定をしたの か、作った人でな いとわからな いため、属人化の リスクが高くなります。また、マク ロを使うにはある程度のプログラミング知識が必要です 。デジピタ!であれば、ノンプ ログラミングでシナリオの作成ができるという点に魅力を感じました」(吉武氏)。
実際にデジピタ!を導入したところ、1 時間半かかっていた作業時 間が 1 5 分に短縮できたという。基幹システムの データ不備で作業がやり直しになったとしても、締切り時間までに余裕を持って対応 できるようになった。「作業時間の 短縮だけでなく、作業工 程の "見える化" が できたのも大きな収穫です。いままで複数の表リストや関数を駆使してやってきた編集処理も 、デジピタ!では 1つの式で定義することができます。点在していた設定を1つに集約したことにより、作業工程を可視化でき、管理がしやすくなりました。」と吉武氏は語る 。吉武氏が 一手に引き受けてきた デー夕加工作業が、誰でもできるようになったことも大きい 。「工程が複雑なため 、新しい担当 者に引継ぎをするのに 2 時間半ほどかかります。さらに独力でできるようになるまでに 1 か月は程度必要でした。そのため特定の 担当者しかできな い状態が続いていました。現在は引き継ぎが 30分程度、慣れるまで にも1週間程度に短縮でき、属人化が解消さ れつつあります 」(吉武氏) 業務の効率化だけでなく、」A ホームネットや各ポータルサイトに アクセスするユーザーの満足度にも つながった。データ配信の頻度を 1 日 1 回から 1 日 2 回に増やすことで、よリリアルタイムに近い空室情 報を掲載することができたからだ。「これも データ加工作業が 効率化さ れたからこそ、実現できたことです 」と古谷氏は強調する。作業時間の 1 5 分のうち、 1 0 分はデジピタ!の自動処理に任せておけるため 、実質作業時 間は 5 分ですむ。隙間時間で作業でき、本来の業務に支障を与えることなく、配信の頻度 を増やすことが可能となったのだ。
今後はサイトヘのデータ配信だけでなく、デジピタ!を他の業務にも展開する予定だ。 デジピタ!の活用範囲を増やし、 Excel を使用するすべての作業を効率化したいと古谷氏は意気込む 。「現場では Excel を相当使っているはずです 。にもかかわらず、現場レベルで作業改善のリク エストを募集しても、なかなか上がってきません。担当者レベルでは、非効率的な作業をどのように自動化していくのか想像しにくいからでしょう」 そのため、管理者層の意識を向上させ、トップダウンで業務改善を進めている。「今後会社が成長していくため には、安定した顧客基盤を武器に、新しい付加価値を作り出していかなければなりません。そのために社員一人 ひとりが、定型作業を極力減らし、創造的な 仕事に注力する必要があります 。こうした働き方改革のためには、管理者が明確な問題意識を持って、部下に業務改善を働きかけていくことが大切になります。デジピタ!の機能を最大限活用していけるよう、全社での意識改革に取り組んでいきます」 (古谷氏)。