● 移行プログラム開発のコスト増
● 段階的な移行の場合、作業コストがさらに増大
● 変更が頻発するので移行プログラムの仕様管理が煩雑
● データ移行の開発工数が50% 程度削減し、コスト減分を顧客へ還元
● 細かい変更が頻発する移行仕様の「見える化」が実現
● 活用範囲が広がるQanat を提案することで提案の独自性が高評価
ニッセイコムは、親会社である日精株式会社を始めとして、幅広い業種における基幹システムの構築を手がけている。基幹システムの入れ替えで必ずといっていいほど発生するのが旧システムからのデータ移行だ。ニッセイコムでは移行作業のコスト増に悩みを抱えていた。
「それまではデータ移行用のプログラムを都度開発していました。移行作業は1 回やって終わるということはなく、何度も繰り返して実行し、修正を重ねて齟齬を無くしていく作業が必要です。その作業を移行プログラムで実施する場合、修正が発生するたびにプログラムをやりなおしてコンパイルする作業が発生します。この作業にかかる時間と手間がシステム構築全体 のコストを圧迫し、お客様にも負担がかかっていました。」と同社システム第一部課長の増田康史氏は振り返る。 システムの規模が大きくなればなるほど、コストのインパクトが大きくなる。
「大規模な基幹システムの場合は、ある支店でパイロット導入し、その後段階的に支店の範囲を広げて導入する、といったケースが多いのですが、その場合は何度も移行作業をしな ければなりません。作業回数が増えれば増えるほど、コストが膨れ上がってしまうのも課題でした。」(増田氏)移行作業にツールを使用するきっかけとなったのが、親会社である日精株式会社のシステム構築を手がけた時だった。この時には他社製品を使用してニッセイコムのERP パッケージ「GrowOne Cube」にセールスフォース・ドットコムの「Salesforce」、サイボウズの「kintone」と複数のシステムを連携していた。このシステム間のデータ連携に使用したところ効率化できることがわかったため、データ移行でも効率化が図れるのではと採用の検討を始めた。そこで他の案件のデータ移行作業でその製品を使用したいと考えたが、ネックとなったのが価格だった。
「機能は豊富なのですが、価格が高く、移行作業の目的で採用することはできませんでした。移行作業のコストを減らすのが目的で導入すると、予算に見合わなくなります。高額な製品が実現する高度で柔軟な設定もデータ移行には必要ないことが多く、オーバースペックだと感じていました」と増田氏は語る。
その時にニッセイコムのパートナーであるサイボウズ社の紹介で知ったのが「Qanat」だ。Qanat は企業内に存在するシステムデー タをノンプログラミングで抽出・加工し、他システムへの柔軟なデータ連携を実現する製品だ。サイボウズ社の製品「kintone」に接続するアダプタをセットにした「Qanat Air for kintone」もリリースしている。 当初検討した製品と比較してシンプルな機能のQanat だが、同社システム第一部主任の灘浪康介氏は価格が安く、操作性が良いこと を評価した。「Qanat を移行作業だけで使用してもコストに見合う価格であるうえに、項目が絞られていてシンプルなので、簡単に操 作できるのではと感じました」。移行作業だけでなく、他システムとのデータ連携ができることも魅力だった。
「他システムとのデータ連携ができるので、システム構築の提案に盛り込みやすくなるメリットが評価につながりました。リアルタイムでのシステム間データ連携には向きませんが、定期的にデータを取り込む場合や、手動でバッチとして動かすという場合に、Qanat が威力を発揮すると思います。」(増田氏) その後、システム構築を提案する際の移行ツールとしてQanat を提案したところ、エンドユーザーに採用されたことから、案件への適用が始まった。
実際にQanat を使用してメリットを感じたのはメンテナンス性の高さだ。「どのデータベース・カラムにどんな加工をして移送している のかビジュアライズされているので、とても管理しやすいですね」(増田氏)。
灘浪氏は、シンプルな機能・設定項目が操作性につながると評価する。「他社製品は設定項目がとても多く、何かしたいときにどう操作すればよいのか迷うことがありますが、Qanat は項目が絞り込まれている分、直感的に操作できるのですぐ習熟することができます。最初はシンプルさに驚きましたが、実際に使ってみて必要十分なケースが多いと感じました」メンテナンス性、操作性の良さがコスト削減にも直結した。
「移行作業のうち、設計については従来とコストは変わりませんが、プログラム開発については約50% コストを削減できました。コストを圧縮できたことで、顧客にもその分システム構築を安価にご提供できるため、当社だけでなく顧客へのメリットも大きくなります」(増田氏)。 コストを削減し、要件以外にも活用範囲を広げられるQanat を提案することにより、顧客から提案の独自性が高く評価された。「基幹システムは他のシステムと連携するケースが多いので、移行ツールだけでなく、他のシステムと連携できるQanat を提案に盛り込むと、非常にお客様に興味を持っていただけます」(増田氏)。当初は開発効率を向上する目的で導入した場合でも、後にエンドユーザーが他の目的で使う例も多いという。
「基幹システムを構築 した後に、分析用のデータベースを作りたい、他のシステムと連携したいなど、当初要件にはなかったご要望が出てきた場合でも、Qanat をあらかじめ導入していれば対応できます。Qanat はドラックアンドドロップで簡単に設定できるので、お客様ご自身で設定して、低コストで実現できることが評価されています」(灘浪氏)。
現在ニッセイコムでは、約10社にQanat を導入している。データ移行はもちろん、システム間連携や、社内の開発業務効率化など、用途は多岐に渡る。今までは基幹システムを構築する顧客を中心にQanat を提案してきたが、今後は自社パッケージ「GrowOne Cube」とタイアップすることも検討している。
「基幹業務のパッケージには必ずデータ移行が発生します。今までは、パッケージにあわせ たレイアウトでお客様にデータを用意してもらっていました。このやり方の場合、レイアウトに合わせて今まで使っていたデータを加工したり、変換したりする必要があるため、お客様に重い負担がかかっています。Qanat を使えば、データを用意する作業が効率化できると 期待しています。お客様のメリットを最大化するために、常に新しい取り組みにチャレンジしていきたいですね」(増田氏)。